③脳タイプ別のメンタルアプローチ

 

試合前に深呼吸やストレッチなどでリラクセーションを高めようとする選手は多いが,こうしたリラクセーションが役に立つのは,ストレス時に覚醒レベルが上がるタイプのみである.

 

ストレス時に覚醒レべルが下がるタイプの選手が行えば,さらに覚醒レベルが低下し,集中力の低下を伴い,結果,パフォーマンスの低下が予想される.

 

既述したように「結果」を意識する,しない,なども含め,脳のタイプに応じたメンタル戦略,コントロール技法が必要不可欠なのである.

 

それには,「ストレスプロファイル」などの脳波分析で,安静時とストレス時の覚醒レベルの変化を確認する必要がある.

 

安静状態での「QEEG(定量的脳波検査)」などの脳のマッピングを行っても当然効力はなく,また「QEEG」と精神分析を結び付けるにはまだ時代が十分に追い付いていない.

 

「Zスコア」と呼ばれる,数百人分の脳波の標準データを元にその標準に近づけるトレーニングが存在するが,

 

繰り返しになるが,それぞれに脳の特性があり,それを標準に近づけようとする行為自体が良いことなのかが未知数なのである.

 

というより,「Zスコア」を活用した脳波トレーニングは一時期,かなり話題になり,私もそのデータとソフト,センサーを持っていたが,期待していた効果は上がらなかった

 

その後,海外の論文の数も増えることなく,理論上は良いものでも,臨床という実際面ではイコールではないなと思った次第である.

 

また,多チャンネル式の脳のマッピングによる脳波トレーニングは華々しいが,複数の脳波を同時にコントロールすることは理論上ほぼ不可能である.

 

人は,極論一つのことにしか集中できないのだ.

 

また,「TMS(経頭蓋磁気刺激)」などの磁気刺激による治療も不安や,うつ症状への一定の改善効果を上げているが,問題は外から刺激を加えることで,神経の活性化を促すことである.

 

このことは自体は問題ないが,治療という特性上,通い続ける必要があり,通わなくなるとほぼ元の状態に戻ってしまう点である.

 

それは,薬を飲み続ける行為と同じであり,投薬を止めれば元の状態に戻りやすく,また外的刺激は投薬治療に対してアレルギーを感じる人には耳よりの情報に感じるが,

 

実際は,薬を飲んで内側から脳に刺激を与えるのか,脳の外側から刺激を与えるかの違いでしかないのである.

 

当スタジオでは,トレーニングということにこだわっている.

 

それは,トレーニングという行為は,筋トレのごとく,自分自身の力で脳のシナプスなどの電気信号の強化や回路の構造変化を促していき,

 

外的に刺激を加えた方法よりも長期的な効果が生まれやすいからである.

 

実際,20-30回の脳波トレーニング(ニューロフィードバック)は,その後,少なくとも半年間は効果が維持されていることが報告されている

 

これには,専門的だが,脳のポジティブフィードバックやネガティブフィードバックなどの脳の入出力,A10神経などによる強化学習サイクルが関わっていると推測されている.